koshiromのメモ

ニュースを見て考えたことのメモ

未だに安倍政権の支持率がこれほどある理由

安倍内閣の支持率が過去最低の水準に下がっているらしい。

www.jiji.com

内閣支持37%、不支持は最高54%…読売世論調査 : 世論調査 : 選挙・世論調査 : 読売新聞オンライン

安倍内閣「支持する」34% 第2次政権発足以降 最低の水準に | 選挙 | NHKニュース

 

「謎の2割」は誰なのか?

このような内閣の支持率が公表される度に、twitterでは「これほど不祥事が多く民意を無視する政権が、なぜ未だにこれほど支持されているのか理解できない」という類の意見が多くリツイートされているのを見かける。大企業や富裕層や身内など安倍政権によって利益を得ている人や、安倍首相を妄信しているような人たちだけでこれほどの支持率になるのだろうか?という疑問だろう。

厚生労働省が行っている「2019年 国民生活基礎調査」で所得の分布状況を見ると、1,000万円以上の世帯を富裕層としても12.1%に過ぎないし、安倍首相を妄信している人はさらに少ないはずだ。仮にこれら全員が安倍政権の支持者だったと仮定しても15%程度にしかならない。

国民生活基礎調査|厚生労働省

ネトウヨ像覆す8万人調査 浮かぶオンライン排外主義者:朝日新聞デジタル

 

では、3割強の支持者のうち上記の15%程度を引いた残りの2割前後はいったい誰なのか?今回はこの「謎の2割」の人たちについて考察したい。

その前に、そもそも内閣支持率世論調査は正しいのか?という疑念を抱いている人もいると思う。確かに森友文書改ざんをはじめとした様々な問題が原因究明も再発防止もされていないのだから、政府や政府とつながりの強い組織が公表する数字が同じように改ざんされていてもおかしくはない。

しかし、今回は多少の不正があったとしても支持率を20ポイントも高く見せるほどの不正はされていないという前提で、より単純で根本的な仮説を検証してみたいと思う。それは、「謎の2割」の人たちは単に問題を「知らないだけ」なのではないか?という仮説だ。

 

ネットでニュースを見ない人の割合

まさか?と思うだろうか。普段ネットで当たり前のようにニュースを見ている人には、これほどネットやスマホが普及した世の中で、これほど報じられている安倍政権の問題を「知らない」人がいるなんて信じられないかもしれない。

しかし、テレビでは安倍政権による様々な問題に関する報道がネットと比べて少ないため、情報の摂取をテレビに依存している特定の層においては安倍政権の問題を知ることができずにいる人が相当数いる可能性はある。

実際はどうか?まずは普段ネットでニュースを見ていない人がどれくらいいるのか確認してみる。

総務省が情報通信サービスの利用状況等について調査した「平成30年通信利用動向調査」によると、ネット利用者に対して「過去1年間にインターネットで利用した機能・サービスと目的・用途」を聞いた問で「ニュースサイトの利用」と答えた人は20代~80代以上の平均で57.3%、これを人口比にすると50.8%となる。つまり、残りの半数近くの人は過去1年間で1回もニュースサイトを利用していないことになる。

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統計調査データ:通信利用動向調査:報告書及び統計表一覧(世帯編)

統計局ホームページ/人口推計/人口推計(2019年(令和元年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳),男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級),男女別人口‐

 

テレビの利用度と信頼度

では、半数の人たちは世の中の出来事や動きに関する情報をどのメディアで得ているのか?総務省が行った「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」の報告書によると、ニュースを見る際の手段は20代から60代までのすべての年代においてテレビが5割を超えてもっとも高い結果だった。しかもこの調査はオンライン調査であり、回答者は全員普段からネットを利用している人であるため、実際にはテレビはもっと高く、インターネットはもっと低いはずだ。

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https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/h27_06_houkoku.pdf

 

また、同じく総務省の「平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、「信頼できる情報を得る」ためにもっとも利用するメディアとしても、10代から60代までのすべての年代においてテレビが5割を超えてもっとも高い結果だ。

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総務省|情報通信政策研究所|情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

 

もう一つ、テレビをNHKと民放に分けて聞いている調査結果も見てみる。公益財団法人の新聞通信調査会が2019年に行った「メディアに関する全国世論調査」によると、「各メディアの信頼度」がもっとも高かったのは「新聞」で68.9点、次いで「NHK テレビ」が68.5点、「民放テレビ」が62.9点だった。

さらに「各メディアの印象」を聞いた問で「情報が信頼できる」メディアとしてもっとも高かったのは「NHK テレビ」で58.2%、次いで「新聞」が53.7%、「民放 テレビ」が42.4%で、「インターネット」は14.8%だった。

世論調査 | 公益財団法人新聞通信調査会

 

これらの調査結果は、普段ネットでニュースを見ていない人の多くは代わりにテレビ、特にNHKから得た情報を基に世の中の出来事や動きを認識し、価値判断や意思決定を行っていることを示唆している。

 

NHKによる政権擁護とそれらに対する批判の数々

ここまでで合点がいった人もいるかもしれない。普段からネットでニュースを見ている人の多くにとっては、テレビ、特にNHKが安倍政権にとって都合が悪いニュースを報じなかったり、報じても政権に悪い印象を与えないよう編集をしたり、政権の主張を無批判に放送したりしていることは周知の事実だからだ。そうした問題を取り上げた記事やツイートは無数にあるが、一部を掲載する。

 

「NHKよ、なぜ安倍首相への帰れコールを隠すんだ」 海外メディアの記者が疑問視【沖縄・慰霊の日】 | ハフポスト

「なぜこのネタを出さないんですか!」森友問題“遺書”スクープ記者がNHKを見限った瞬間 | 文春オンライン

首相のサンゴ発言、NHK「自主的な編集判断で放送」:朝日新聞デジタル

 

  

こうしたテレビの印象操作により、安倍政権の問題を知ることができないばかりか、誤って認識している人が相当数いることは明らかだ。

つまり「謎の2割」は、テレビが「知る権利への奉仕」という使命をないがしろにしているせいで知る権利を享受できずにいる人たちであり、安倍政権はそうした「知らされていない人たち」の一部からの支持によって存続できている可能性が高い。以前の記事で書いた「市民に本当の姿を知られないことで権力を保持している小池知事と、都合が悪い情報を伝えないことでそれに加担するマスメディア」と同じ構図だろう。 

goover.hateblo.jp

 

 こうした現状を変えるにはどうすればよいのだろうか。。いずれまた書きたいと思う。